なぜクリスマスにプレゼントを贈るのか。クリスマスの起源と『賢者の贈り物』
 この記事は近々リライト予定です。それまでは、文字だらけの少々味気ない記事のままですが、良ければぜひご覧になってください。

今年はどうも暖かい日が続きますが、気付けば12月。例に倣って「今年もあっという間だったなぁ...」などと感慨に耽りつつ、年末の大掃除を思うと憂鬱な気もしますね。ですが、その前にビッグイベント「クリスマス」があるのを忘れてはいけません。世の恋人たち、そして誰よりも子供たちにとって大切な思い出となるであろう「クリスマスプレゼント」。今回はその由来と伝説、クリスマスの起源をご紹介しようと思います。

クリスマスの起源は「冬至の祭り」?

クリスマスプレゼントの歴史を辿る前に、まずはクリスマスの起源について知っておきましょう。いきなりですが、日本でよく耳にする俗説「クリスマスはイエス・キリストの誕生日」は誤りです。実は、新約聖書においてもイエス・キリストの誕生日についての言及は見られず、詳しいことは何もわかっていないのです。

「でもクリスマスはキリストの誕生を祝う日だって偉い人が言ってたよ?」と思った方!そうなんです。仰る通り、クリスマスはイエス・キリストの誕生(キリスト教では"降誕"という)を祝う日で間違いありません。「誕生日」ではなく、「誕生したことを祝う日」なんです。ややこしいね!

ちなみに...紀元前を「B.C.(Before Christ)」と表記しますが、これはかつて西暦1年をキリストの誕生年とする決まりがあったためで、現在でも正確な誕生年は分かっていません。マタイの福音書やルカの福音書より推察してそれぞれ紀元前4年とも西暦6年とも言われています。

では、なぜ12月25日にキリストの誕生を祝うようになったのでしょうか。どうやら、クリスマスの起源は「古代ローマ」にあるようです。ここからは少し歴史のお話を。

2世紀から4世紀にかけて、ローマでは太陽神ミトラスを主神とするミトラ教という密議宗教が隆盛を誇っていました。元々はインドやイランで興った信仰でしたが、当時のローマがあらゆる異教の文化を吸収しながら統治領域を拡大していたため、地中海世界へと浸透していったもののようです。

そんなミトラ教の慣習の一つに「冬至の終わり(12月25日)に太陽の復活を祝う」というものがありました。キリスト教の台頭によって5世紀にはすっかり影を潜めてしまうミトラ教ですが、この慣習はローマの市井に根付いていたといいます。しかし、同時期のローマでは、農耕神サートゥルヌスを祝う「サートゥルナーリア」も冬至の祭りとして催されていました。

これは、おそらくは紀元前217年、第二次ポエニ戦争において敵国カルタゴに敗れたローマの、兵士や市民の鬱屈を晴らすために始めた宴に由来しています。始めは12月17日だけだった祭りも、ミトラ教の習慣に合わせたのか、やがては一週間ほど開催されるようになったようです。あまりに人気の祝祭だったため、日程を短くしようとした皇帝は悉く反乱を招いたのだとか。

また、313年のミラノ勅令によってキリスト教を公認したローマは、392年に事実上のキリスト教国となります。そして、4世紀中葉からはそれら「冬至の祭り」を引き継ぐ形で、1225日を「キリストの降誕祭」として祝うようになった、とされています。特に、クリスマスの文化である「プレゼント」や「ご馳走」は、サートゥルナーリアでの習慣でもありました。

つまり、「ローマに根付く祝祭をキリスト教が貰い受けた」のがクリスマスの起源なのです。どうやら、12月25日とイエス・キリストには直接の関係がないようですね。なんてこった。とにかく、古代ローマですら異教の祝祭に寛容だったのですから、「日本のクリスマスはおかしい!」などと言わず皆さんで楽しくお祝いしましょう。

クリスマスツリーはどこから来たの?
クリスマスと言えば「クリスマスツリー」もお馴染み。ですが、やはりこれも元々はキリストと無関係でした。クリスマスツリーは、北欧のゲルマン民族が冬至祭「ユール」において飾った樫の木が原型とされています。この慣習がキリスト教に取り入れられると、横からのシルエットが三角形(三位一体の象徴)に見えるモミの木が飾られるようになったのだそうです。1419年にドイツのパン職人が救貧院に飾ったものが記録に残っている最古のクリスマスツリーだとか。...素敵!

なぜクリスマスにプレゼントを贈るのか

クリスマスプレゼントの由来

前述の通り、クリスマスの起源の一つと考えられているローマの冬至祭「サートゥルナーリア」には、贈り物を交わす文化がありました。これが事実ならば、「クリスマスプレゼント」がこの伝統に少なからずの影響を受けているのは間違いないでしょう。しかし、「クリスマスプレゼント」はキリスト教にとっても大事な意味があるのだといいます。

それは新約聖書より、イエス・キリストが誕生した時のこと。東方の国にいた三人の賢者は、遥か遠く西の空に"見たことのない星"を見つけ、星の下を目指す旅を始めました。彼らは、その星が「ユダヤ人の王が生まれたことを告げるもの」だと悟ったのです。

それから数カ月後、輝く星に導かれた彼らはベツレヘムの地で、ついに母マリアに抱かれた幼きイエス・キリストと対面します。そして、後に「東方の三博士」と呼ばれる彼らは、その幼子に礼拝し贈り物を捧げました。青年の賢者メルキオールは黄金を、壮年の賢者バルタザールは乳香を、老人の賢者カスパールは没薬(もつやく)を、それぞれ贈ったといいます。乳香も没薬も香料として利用される樹脂です。

この伝説から、キリスト教では、クリスマスプレゼントを「イエス・キリストの誕生を祝う贈り物」に準えているのだそうです。なんともロマンチックな話ですね。ちなみに、「東方の三博士」を導いた星は「ベツレヘムの星」と呼ばれ、クリスマスツリーの頂上に飾られる星のモデルとなっています。

サンタクロースと子供たち

クリスマスプレゼントの由来とされる物語がもう一つあります。それが、子供たちの人気者「サンタクロース」の起源となった、4世紀の小アジアはミラの大主教、「聖ニコラウス」の伝説です。

慈悲深い司祭であったニコラウスは、ある日、とある商人の三人の娘が貧しさのあまり身売りせざるを得ない状況にあるという噂を耳にします。そこで彼は、夜中にこっそりと商人の家の窓から金貨を投げ入れたのです。その金貨は偶然、暖炉の側に干してあった靴下に入ったといいます。

こうして貧しい娘たちを救った聖ニコラウス(セントニコラウス)の名が、オランダ語を経由したことで「サンタクロース」となったようです。そして、オランダでは14世紀頃から、彼の命日にあたる12月6日を祝うようになりました。この日は「聖ニコラウスの日」と呼ばれ、子供にプレゼントを贈る日とされています。子供たちがサンタクロースからの贈り物を期待して、暖炉の側に靴下を掛けるのもこの日の伝統でした。

ところが、1535年、かのマルティン・ルターの提言によってこれらの風習はクリスマスへと取り込まれ、現在のような形で祝われるようになったといいます。まさに鶴の一声!「クリスマスの夜にサンタクロースが子供たちにプレゼントを届ける」という摩訶不思議な物語は、ここから始まったようです。

ちなみに...サンタクロースの特徴である「赤い服に白いひげ」「トナカイの引く空飛ぶそり」「煙突から家に入る」などは、1823年にアメリカの新聞に匿名で寄稿された『サンタクロースがきた』という詩が起源とされています。さらに、1931年にコカ・コーラが赤い服のサンタクロースを広告に採用したことで、このイメージが世界中に定着したのだそうです。

参考『サンタクロースがやってきた』:青空文庫

『賢者の贈り物』

ところで、短編の名手として知られるアメリカの小説家オー・ヘンリーの代表作『賢者の贈り物』をご存知でしょうか。「東方の三博士」の逸話を下敷きにしたこの短編は、1905年の12月に新聞に掲載されて以来、世界中で大人気の物語となっています。

それは、若い夫婦のお話です。夫婦には宝物がありました。夫のジムが持つ金の懐中時計と、妻のデラが持つ美しい髪です。クリスマスの前日、貧しくも仲の良い二人は、互いに素敵なクリスマスプレゼントを贈ろうと考えていました。しかし、お金が足りません。デラは悩んだ末に、その長く美しい栗色の髪を売って、素敵なプラチナのチェーンを買うことにしました。それは、ジムが祖父と父から受け継いだ懐中時計に相応しいものでした。

一方、ジムも愛する妻に贈るプレゼントに悩んでいました。と言っても、買いたいものは決まっています。ブロードウェイのショーウィンドウにあった美しいベッコウの櫛(くし)です。それは、デラが憧れていたものでした。しかし、やはりお金が足りません。そこで、ジムは自慢の懐中時計を質に入れ、妻の美しい髪に似合うその美しい櫛を買うことにしました。

その夜、二人はお互いのプレゼントを見て驚愕します。そして、涙ながらに微笑み合うのでした。二人は互いのために、自らの宝物を失ったのです。しかし、この一見愚かな行き違いこそ何よりも尊く、この二人こそが誰よりも賢い者であることの証明なのでした。

この悲劇的な喜劇において「賢者の贈り物」とは何だったのでしょうか。オー・ヘンリーはなぜ、この夫婦を賢者と呼んだのでしょうか。その答えは彼らのプレゼントにあるのです。プラチナのチェーンでも、ベッコウの櫛でもありません。彼らが互いに贈ったもの、それは「自己犠牲を顧みないほどの愛情」です。

きっと、どんなプレゼントであろうと「愛情」に勝るものは存在しないのです。皆さんも、愛する人へのプレゼントに悩んだ時には、ぜひこの物語を思い出してください。そして、高価なものを贈ることに拘らず、大切な人との時間を大切に。それが一番です。

参考『賢者の贈り物』:青空文庫

最後に

最後までご覧いただきありがとうございます。少々長くなってしまいましたが、クリスマス、クリスマスツリー、クリスマスプレゼント、サンタクロースの由来を辿らさせていただきました。楽しんでいただけましたでしょうか。

残念なことに、今回ご紹介したお話はどれも歴史的な検証が不十分なものばかりです。ほとんどが伝承の類なので仕方のないことではありますが、飽くまで”物語”として楽しんでいただければと思います。

そう言えば、一つ思い出したことがあります。あれは、私が幼稚園の年長さんだった年のクリスマス。同じ組の女の子がクリスマスプレゼントに「500円玉」をお願いした、と聞ききました。どうやら、その女の子は「500円玉」でけん玉を買いたかったそうです。

当時の私は「大人びた子だなぁ...」とだけ思ったような気もします。しかし、今思えば、あの子が本当に欲しかったものは「けん玉」ではなく、「けん玉を買った思い出」だったのかも知れません。なんて、考えすぎですかね?

ともかく、皆さんのクリスマスが”素敵な思い出”となることを心より願っております。

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